母娘3代受け継がれた振袖。

結婚が決まったころ、お茶・お花・着つけのお稽古にどっぷりはまり、休日のみならず、会社を休んでまで着物を着てお茶会に行ったりしていたわたしは、もちろん式は白無垢・お色直しは色打ち掛けに振袖と、和装にこだわりました。
彼は何も言いませんでしたが、お友達や親兄姉からは「ドレスも着ないと後悔するよ」とか「ケチケチしないで。お金が足りないなら出してあげる」とか、反対の嵐。
でも、わたしには、どうしても和装にこだわりたい理由がありました。
広島でブライダルフェアでは試食会などいくつか見に行きましたが「和装だけ」の式披露宴を思いついたのは、お稽古ごとの影響もありましたが、わたしの実家にあった1枚の振袖がきっかけでした。
子どものころから何度となく母に見せてもらっていたそれは、祖母が娘のころ習っていたお能の舞台衣装でした。
戦時下に結婚した祖母は、花嫁衣装が手に入らなかったため、その振袖を着て結婚式にのぞんだのだそうです。
やがて生まれた母も、成人式と結婚披露宴で、その振袖を着ました。
母は、わたしにも成人式でその振袖を着てほしかったようでしたが、古めかしい振袖が恥ずかしくて、わたしは新しい振袖を仕立ててもらいました。
結婚が決まったとき、わたしはお色直しにその振袖を着ることで、母や祖母への感謝を伝えたいと思ったのです。
母と祖母、その幸せを願ってくれたたくさんの人たち、そしてわたしの幸せを祈ってくれる人たち、そういう母娘3代にわたる温もりをまとって結婚したいと思ったのです。
わたしの気持ちは、母と祖母以外にはなかなか理解されませんでしたが、広島での披露宴の後、義姉と恩師の2人が「感銘を受けたわ」「勉強になりました」とわざわざ伝えに来てくれたので、自分の意志を貫いてよかったと思いました。
洋装に関しては、わたし自身ドレスを着てみたい気持ちもあったので、写真のみ撮りました。
なので記念写真は、白無垢・色打ち掛け・振袖・ウェディングドレス・カラードレスの5種類あります。
ドレス姿も見たいという母の願いにもこたえることができました。
できれば、わたしの娘にも披露宴であの振袖を着てほしいと思っていましたが、あいにくわたしには息子しか生まれませんでした。
でもいつか息子に、ひいおばあちゃん・おばあちゃん・わたしと母娘3代受け継がれた、愛情のつまった振袖を見せてあげたいと思っています。

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